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ゴム押出成形とは?仕組み・工程・メリットから材質選びまで徹底解説

ウェザーストリップや建築用パッキン、各種ホースなど、私たちの身の回りにある長尺のゴム製品。これらを効率的かつ低コストで連続生産する上で欠かせないのが「ゴム押出成形」です。
しかし、いざ自社の製品開発に取り入れようとすると、「どのような形状まで作れるのか」「寸法精度のブレはどの程度か」「用途に合った材質はどれか」など、設計や発注に悩むことも多いのではないでしょうか。
この記事では、ゴム押出成形の基本的な仕組みや工程をはじめ、メリット・デメリット、さらには失敗しないための材質選びから設計時の注意点まで徹底解説します。
ゴム押出成形とは
ゴム製品の製造方法には様々な種類が存在しますが、なかでも長尺の製品を連続して製造する際に用いられるのが押出成形です。
ゴム押出成形(連続押出)の定義
ゴム押出成形とは、加熱して柔らかくした未加硫ゴム(生ゴム)を、スクリューを備えた機械で前方に押し出し、先端に取り付けた「口金(ダイス)」と呼ばれる金型を通すことで、金太郎飴のように同一断面の長尺製品を連続的に製造する加工技術のことです。
ゴム押出成形の仕組み
押出成形のメカニズムは、身近な例に例えると「ところてん」や「チューブ入りの歯磨き粉」を押し出す仕組みに似ています。筒状の機械の中に材料となるゴムを投入し、圧力をかけて特定の形状の穴から押し出すことで、目的の形を作り出します。
押出成形機の基本的な構造
一般的なゴム押出成形機は、主に以下の要素で構成されています。
- ホッパー(供給口): 材料となる未加硫ゴムを投入する部分。
- シリンダー(円筒): 内部でゴムを加熱し、搬送するための筒状の部品。
- スクリュー: シリンダー内部で回転し、ゴムを練り込みながら前方へ押し出す役割を担います。
- ヘッドおよび口金(ダイス): 押し出されたゴムの最終的な断面形状を決定する金型部分。
材料はスクリューの回転によって生じる摩擦熱と、シリンダー外部からの加熱によって適度な柔らかさとなり、均一な状態で口金から押し出される構造となっています。
ゴム押出成形の製造工程
プラスチックの押出成形とは異なり、ゴムの場合は「加硫(かりゅう)」と呼ばれる弾性を持たせるための化学反応工程が必要となります。具体的な製造プロセスは、大きく分けて4つのステップで進行します。
1. 混練(練り):未加硫ゴムに配合剤を混ぜる
最初のステップは、ベースとなる生ゴムに様々な配合剤(加硫剤、促進剤、老化防止剤、カーボンブラックなど)を均一に混ぜ合わせる「混練」工程です。製品に求められる硬さや色、耐久性などの特性は、この配合のバランスによって決定されます。
2. 押出(成形):スクリューで押し出し、口金(ダイス)で形状を作る
混練された未加硫ゴム(コンパウンド)を押出成形機に投入します。機械内部のスクリューが回転することで、ゴムは熱と圧力を受けながら前方へと運ばれ、先端の口金(ダイス)を通過することで所定の断面形状に成形されます。
3. 加硫(架橋):熱を加えてゴムの弾性を持たせる
口金から押し出された直後のゴムは、まだ粘土のように柔らかく、元の形状に戻る力(弾性)を持っていません。その結果、製品としての機能を持たせるために「加硫」と呼ばれる加熱処理を行います。熱を加えることでゴム分子同士が結びつき(架橋構造)、私たちがよく知るゴム特有の弾力性が生まれます。
4. 冷却・切断・仕上げ:冷やして所定の長さにカットする
加硫が完了した高温のゴム製品を、水槽などで冷却して形状を安定させます。その後、用途に合わせて必要な長さに自動切断機でカットし、外観検査や寸法の確認などの仕上げ工程を経て完成となります。
加硫方式の種類
ゴムの押出成形においては、製品を連続的に加熱して加硫を行う「連続加硫(CV:Continuous Vulcanization)」が主流となっています。代表的な加硫方式には以下のようなものがあります。
UHF加硫(マイクロ波加硫)
電子レンジと同じ原理でマイクロ波を照射し、ゴムの内部から均一かつ急速に加熱する方式。スポンジゴムや厚みのある製品の加硫に非常に適しています。
HAV加硫(熱風加硫)
高温の熱風を循環させた炉の中を通過させることで加熱する方式。UHF加硫と組み合わせて使用されることが多く、表面を滑らかに仕上げる効果があります。
PCM加硫(無塩加硫/ガラスビーズ加硫)
高温に熱した細かなガラスビーズ(液体のように流動する)の中を通過させる方式。均一な熱伝達が可能で、形状の崩れを防ぐ効果が期待できます。
このため、製品の材質や形状に応じて、これらの加硫方式を単独、あるいは組み合わせて最適な製造ラインを構築します。
他のゴム成形方法との違い
ゴム製品を製造する成形方法は、押出成形以外にも存在します。製品の特性に合わせて最適な方法を選択することが重要です。
ゴムプレス成形(圧縮成形)との違い
プレス成形は、金型の中に未加硫ゴムの塊を入れ、上下から熱と高い圧力をかけて成形・加硫を行う最も歴史の古い方法です。
向いている製品・コスト・生産性の比較
- 向いている製品: Oリング、防振ゴム、立体的な形状の製品。
- コスト: 金型構造が比較的シンプルであるため、初期の金型費用は抑えやすい傾向にあります。
- 生産性: 1回のプレスごとに人の手で材料のセットや取り出しを行う場合が多く、連続生産には不向きです。
ゴム射出成形(インジェクション)との違い
射出成形は、加熱して流動状態にしたゴムを、閉じた金型の中に高圧で注入(射出)して成形・加硫を行う方法です。
向いている製品・コスト・生産性の比較
- 向いている製品: 複雑な立体形状の製品、高い寸法精度が求められる部品。
- コスト: 設備や金型が非常に高価になるため、初期投資は大きくなります。
- 生産性: 工程の多くを自動化できるため、大量生産において圧倒的な生産性を誇ります。
【比較表】押出・プレス・射出成形の特徴まとめ
| 比較項目 | 押出成形 | プレス成形(圧縮成形) | 射出成形(インジェクション) |
|---|---|---|---|
| 主な形状 | 同一断面の長尺品 | シンプルな立体形状、板状 | 複雑な立体形状 |
| 連続生産性 | ◎(非常に高い) | △(低い) | 〇(高い・自動化向き) |
| 金型費用 | ◎(安価:口金のみ) | 〇(比較的安価) | △(高価) |
| 寸法精度 | △(収縮の影響を受けやすい) | 〇(標準的) | ◎(非常に高い) |
ゴム押出成形の3つのメリット
長尺製品の製造において、ゴム押出成形が多く採用されているのには明確な理由があります。
長尺製品・連続生産に最適
最大のメリットは、チューブやホース、建築用のパッキンなど、長さが数メートルから数十メートルにも及ぶ製品を切れ目なく連続して生産できる点です。プレス成形や射出成形では金型のサイズという物理的な制限があるため、長尺品の製造は押出成形の独壇場と言えます。
複雑な断面形状(異形押出)に対応可能
口金(ダイス)の形状を工夫することで、中空構造(チューブ状)や、複雑な凹凸を持つ断面形状(ウェザーストリップなど)であっても、一度の工程で成形することが可能です。
金型(口金・ダイス)費用が比較的安価に抑えられる
プレス成形や射出成形の金型は、製品全体を包み込む大規模な金属ブロックが必要となりますが、押出成形に必要な金型(口金)は、断面形状をくり抜いた比較的小さな金属プレートです。その結果、初期の金型製作費用を大幅に抑えることができ、多品種少量生産や試作開発にも柔軟に対応しやすいという利点があります。
ゴム押出成形のデメリット・注意点
メリットが多い一方で、製造工程の特性上、注意すべきデメリットも存在します。
寸法精度がシビアな製品には不向き(収縮の影響)
ゴムは加硫による加熱・冷却の過程で必ず「収縮」を起こします。特に押出成形は、金型で密閉せずに連続的に押し出して加硫するため、周囲の環境や自重の影響を受けやすく、プレス成形や射出成形と比較して寸法公差(仕上がり寸法のばらつき)が大きくなる傾向があります。1ミリ以下の極めてシビアな精度が求められる製品には不向きです。
断面が一定の形状しか作れない(途中で太さが変わるものは不可)
長手方向に向かって真っ直ぐに押し出す製法であるため、『途中で太さが変わる』『一部だけに出っ張りがある』といった、断面形状が変化する製品の製造はできません。そのような立体的な形状が必要な場合は、プレス成形や射出成形を選択する必要があります。
ゴム押出成形に適した代表的な材質(ゴム種)と特徴
ゴムと一口に言っても、天然ゴムから各種合成ゴムまで多様な種類があります。使用環境に応じた最適な素材選びが不可欠です。
EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)
屋外での使用において圧倒的な実績を持つのがEPDMです。紫外線やオゾン、雨水に対する耐性が非常に高く、劣化しにくいため、自動車の窓枠ゴム(ウェザーストリップ)や建築・土木用の防水パッキンなどに広く採用されています。
シリコーンゴム
-50℃から200℃以上の幅広い温度範囲で柔軟性を保つことができる高機能ゴムです。また、無毒で人体への影響が極めて少ないことから、食品機械のチューブやパッキン、医療機器用途において需要が増加傾向にあります。
NBR(ニトリルゴム)
鉱物油に対する優れた耐性を持つのが特徴です。油に触れても膨潤(ゴムが油を吸って膨らむ現象)や劣化が少ないため、自動車の燃料ホースや工業機械のオイルシールなど、油まわりの環境で必須となる材質です。
CR(クロロプレンゴム)
天然ゴムのような優れた物理的強度を持ちながら、耐候性、耐油性、耐熱性、難燃性などをバランス良く備えた「万能型」の合成ゴムです。一般工業用品から土木建築資材まで、幅広い用途で利用されています。
フッ素ゴム
ゴム素材の中でもトップクラスの耐熱性(200℃以上)と、酸やアルカリ、各種溶剤に対する強力な耐薬品性を誇ります。過酷な環境下で使用される半導体製造装置のシール材や、化学プラント関連などで用いられますが、材料コストは高価になります。
スポンジゴム(発泡ゴム)
ゴムの中に無数の気泡を含ませて成形したものです。軽量であり、優れた柔軟性、断熱性、防音性、クッション性を発揮します。ドアの隙間風を防ぐシール材や、衝撃吸収材として活躍します。
ゴム押出成形の主な用途
私たちの身の回りには、押出成形で作られたゴム製品が数多く存在しています。代表的な用途を産業別にご紹介します。
自動車・輸送機器部品
ドアや窓ガラスの隙間を埋めて雨風を防ぐウェザーストリップは、複雑な断面形状を持つ押出成形品の代表例です。その他、エンジンルーム内のラジエーターホースや燃料ホースなど、車両1台あたりに大量の押出成形部品が使われています。
建築・土木・建材
住宅やビルの窓ガラスをサッシに固定するグレージングチャンネル(窓枠パッキン)や、コンクリートパネルの継ぎ目を埋める目地材、水道管のジョイント部分に使用されるガスケットなど、インフラや建築物の気密・水密性を保つために不可欠です。
家電・産業機械
冷蔵庫のドアパッキン、洗濯機の給排水ホース、各種産業機械の振動を抑える防振ゴム、機器内部の配線を保護するゴムチューブなど、家電から大型機械まで多岐にわたります。
医療・食品分野
点滴用のチューブやカテーテル、食品製造ラインで液体を搬送するホースなど、高い安全性と衛生性が求められる分野では、主にシリコーンゴムを用いた押出成形品が活躍しています。
ゴム押出製品の設計・依頼ポイント
実際にゴム押出製品の製造をメーカーに依頼する際、トラブルを防ぎスムーズに開発を進めるための重要な設計ポイントを解説します。
ゴムの「収縮」を見越した適切な公差設計
デメリットの項目でお伝えした通り、ゴム押出成形は加硫時の加熱・冷却による「収縮」の影響を受けやすい加工法です。そのため、製品設計やメーカーへの依頼時には、以下の2点が重要なポイントとなります。
- 適切な寸法公差(許容範囲)の設定: 金属部品のようなシビアな精度指定は、製造トラブルやコスト増の原因となります。JIS規格(ゴム製品の一般寸法公差)などを参考に、ゴムの特性を理解した上で、実用上問題のない適切な寸法公差を設定しておくことが重要です。
- 収縮率を計算した金型(口金)設計: 目標とする製品寸法よりもわずかに大きく口金(金型)を設計し、加硫後の収縮を経て最終寸法がぴったり合うように調整する必要があります。この収縮率の正確な見極めには、依頼するメーカーの豊富なノウハウと経験が直結します。
肉厚のバランスと変形リスクの回避
断面形状を設計する際、極端に分厚い部分と極端に薄い部分が混在するデザインは避けるべきでしょう。厚みの差が大きいと、加硫時の熱の伝わり方や冷却時の収縮度合いにムラが生じ、製品が反り返ったり波打ったりする変形リスクが高まります。可能な限り均一な肉厚バランスを意識した設計が理想的です。
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まとめ
ゴム押出成形は、同一断面の長尺製品を効率的かつ低コストで大量生産できる非常に優れた加工技術です。金型費用の安さや複雑な形状への対応力といったメリットを活かす一方で、ゴム特有の収縮による寸法公差の特性を十分に理解した上で設計を行うことが、製品開発を成功させる鍵となります。
使用環境に応じた適切な材質選びを含め、信頼できる加工パートナーと連携し、競争力の高い製品づくりを進めていきましょう。
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