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シリコーンゴムとは?構造や用途などの基礎知識を解説!

製造業における部品選定や製品開発において、シリコーンゴムは欠かせない素材の一つです。
耐熱性や耐寒性に優れ、医療機器から自動車部品まで幅広い分野で活用されていますが、その特性を正しく理解して選定できているでしょうか?
本記事では、シリコーンゴムの基本構造から他のゴム材料との違い、具体的な用途、選定時のポイントまでを体系的に解説します。
シリコーンゴムとは
シリコーンゴムは、ケイ素(Si)と酸素(O)を主鎖とするポリシロキサンを基本骨格に持つ高分子材料です。
一般的な有機ゴムが炭素(C)を主鎖とするのに対し、無機元素であるケイ素を主鎖に持つことから、他のゴム材料とは一線を画す独自の特性を発揮します。
その代表的な特性は以下の通りです。
- 優れた耐熱性・耐寒性:-50℃から+200℃、特殊品では-100℃から+300℃を超える広範な温度域で使用可能です。
- 高い電気絶縁性:優れた電気特性を持ち、絶縁材料として広く利用されます。
- 耐候性・耐オゾン性:紫外線やオゾン、雨風などによる劣化が少なく、屋外での使用に適しています。
- 生体適合性:医療分野で求められる高い安全性を有し、人体への影響が少ないため、医療機器や食品分野でも活用されます。
- 撥水性・離型性:表面エネルギーが低く、水や油をはじき、優れた離型性を示します。
- 無味無臭・無毒性:衛生性が求められる用途に最適です。
これらの特性から、シリコーンゴムは自動車、電気・電子、医療、食品、建築など、多岐にわたる産業分野で重要な役割を担っています。
シリコーンゴムの化学構造
シリコーンゴムが持つ独特の物性は、その化学構造に由来します。
特に、主鎖を構成するシロキサン結合が鍵となります。
シロキサン結合の特徴
シリコーンゴムの主鎖は、ケイ素原子(Si)と酸素原子(O)が交互に結合した「シロキサン結合(-Si-O-Si-)」で構成されています。
この結合は、有機高分子の炭素-炭素結合(-C-C-)に比べて結合エネルギーが大きく、非常に安定しています。
また、結合角が広く、自由に回転できるため、分子鎖が非常に柔軟であるという特徴があります。
分子構造が生み出す物性
シロキサン結合の安定性と柔軟性は、シリコーンゴムに以下の物性をもたらします。
耐熱性
高い結合エネルギーにより、高温下でも結合が切断されにくく、熱による劣化が少ないです。
耐寒性
子鎖の柔軟性が高いため、低温下でも分子運動が活発で、ガラス転移点が低く、弾性を保ちます。
電気絶縁性
イ素と酸素の電気陰性度の差が大きく、電気的な分極が起こりにくいため、優れた絶縁性を示します。
耐候性
紫外線エネルギーよりもシロキサン結合エネルギーが大きいため、紫外線による分解が起こりにくく、屋外での長期使用に耐えます。
架橋構造とゴム弾性のメカニズム
シリコーンゴムは、線状のポリシロキサン分子が「架橋」と呼ばれる化学結合によって三次元網目構造を形成することで、ゴム弾性を発揮します。
架橋点が存在することで、分子鎖は引き伸ばされても元の形状に戻ろうとする力を生み出します。
この架橋密度や架橋方法によって、ゴムの硬さや強度、伸びなどの物性が調整されます。
有機ゴムとの構造的な違い
一般的な有機ゴムは、炭素原子を主鎖とする有機高分子です。
これに対し、シリコーンゴムはケイ素と酸素を主鎖とする無機高分子です。
この主鎖の違いが、両者の物性を大きく隔てます。
- 主鎖の結合エネルギー:Si-O結合はC-C結合よりも結合エネルギーが大きく、熱的に安定しています。
- 主鎖の柔軟性:Si-O結合はC-C結合よりも結合角が大きく、分子鎖の回転が自由なため、より柔軟性に富みます。
- 側鎖:シリコーンゴムは通常、メチル基などの有機基がケイ素原子に結合しており、この側鎖の種類によってさらに特性を調整できます。
これらの構造的な違いが、シリコーンゴムが有機ゴムでは達成しにくい耐熱性、耐寒性、耐候性、生体適合性といった優れた特性を持つ理由となっています。
シリコーンゴムの種類と分類
シリコーンゴムは、その製造プロセスや硬化メカニズムによっていくつかの種類に分類されます。
それぞれの特徴を理解することで、最適な材料選定が可能になります。
ミラブル型(HTV:高温加硫型)
ミラブル型シリコーンゴムは、高分子量のポリジメチルシロキサンを主成分とし、シリカなどの補強剤を配合した固形のゴム材料です。
ロールなどで混練し、過酸化物などの架橋剤を加えて高温で加硫(架橋)することでゴム弾性体となります。
主に圧縮成形や射出成形、押出成形などで複雑な形状の部品製造に用いられます。
- 特徴:高い強度と耐久性、幅広い硬度に対応可能。
- 用途例:Oリング、ガスケット、キーパッド、チューブ、電線被覆など。
液状型(LSR:液状シリコーンゴム)
液状型シリコーンゴムは、低粘度の液体状で供給される二液性の材料です。
A液とB液を混合し、加熱することで短時間で硬化します。
主に液状射出成形(LIM:Liquid Injection Molding)によって、精密かつ複雑な形状の部品を効率的に大量生産するのに適しています。
- 特徴:高い流動性による精密成形、高速成形が可能、高い透明性。
- 用途例:医療機器部品、自動車部品(コネクタシール、ガスケット)、乳児用品、ウェアラブルデバイス部品など。
RTV(室温加硫型)シリコーンゴム
RTVシリコーンゴムは、その名の通り室温で硬化するタイプのシリコーンゴムです。
空気中の湿気(一液型)や触媒との混合(二液型)によって化学反応が起こり、ゴム弾性体となります。
主にシーリング材、接着剤、コーティング材、型取り材として使用されます。
- 特徴: 加熱設備が不要、現場での施工が可能、優れた接着性・シーリング性。
- 用途例: 建築用シーリング材、電子部品のポッティング材、コーティング、型取り、補修材など。
特殊シリコーンゴム(導電性・難燃性など)
基本となるシリコーンゴムに特定の添加剤を配合したり、分子構造を改変したりすることで、さらに特殊な機能を持たせたシリコーンゴムも開発されています。
導電性シリコーンゴム
カーボンブラックや金属粒子を配合することで、電気を通す性質を持たせたもの。電磁波シールド材、導電性ガスケットなどに利用されます。
難燃性シリコーンゴム
難燃剤を配合することで、燃えにくい、あるいは自己消火性を持たせたもの。鉄道車両、航空機、電子機器の部品などに使用されます。
フッ素シリコーンゴム
有機基の一部をフッ素基に置換することで、耐油性や耐溶剤性を大幅に向上させたもの。燃料系シール材、化学プラント部品などに利用されます。
高熱伝導性シリコーンゴム
熱伝導性フィラーを配合することで、放熱性を高めたもの。LED照明、パワー半導体の放熱シートなどに利用されます。
用途別の使い分けポイント
シリコーンゴムの種類を選定する際は、以下のポイントを考慮することが重要です。
成形方法
複雑な形状、大量生産にはLSR、汎用的な部品にはHTV、現場での施工にはRTVが適しています。
要求物性
強度、伸び、硬度、耐熱性、耐寒性、耐油性、電気特性など、用途に求められる特性を明確にします。
コスト
材料費、成形加工費を含めたトータルコストを比較検討します。
生産量
大量生産にはLSRが有利ですが、小ロット生産ではHTVやRTVが適している場合もあります。
特殊機能
導電性、難燃性、高熱伝導性など、特定の機能が必要な場合は特殊シリコーンゴムを検討します。
シリコーンゴムの用途・応用例
シリコーンゴムは、その優れた特性により、幅広い産業分野で多種多様な製品に活用されています。
ここでは、主要な産業における応用例をご紹介します。
自動車産業での活用(エンジン周り部品、シール材など)
自動車産業では、エンジンルーム内の高温環境や、寒冷地での使用に耐えうる素材としてシリコーンゴムが不可欠です。
- エンジン周り:ガスケット、Oリング、ホース、プラグブーツなど、耐熱性・耐油性が求められる箇所。
- 電装部品:コネクタシール、センサーハウジング、ワイヤーハーネスの保護材など、電気絶縁性と耐候性が求められる箇所。
- 内装部品:スイッチボタン、ダッシュボードの防振材など。
電気・電子産業での活用(絶縁材、キーパッドなど)
電気・電子機器においては、その優れた電気絶縁性、耐熱性、耐候性、柔軟性が重宝されます。
- 絶縁材:電線被覆、コネクタの防水・防塵シール、電子部品のポッティング材。
- キーパッド:リモコン、電卓、携帯電話などの操作ボタン。
- 放熱材:LED照明、パワー半導体などの発熱部品とヒートシンク間の熱伝導シート。
- 振動吸収材:精密機器の防振ダンパー。
医療・医薬品産業での活用(カテーテル、パッキンなど)
生体適合性、滅菌性、透明性、柔軟性といった特性から、医療分野では人体に触れる部品や機器に広く採用されています。
- 医療チューブ・カテーテル:輸液チューブ、ドレーンチューブ、心臓カテーテルなど。
- 医療用パッキン・ガスケット:薬液容器のシール、医療機器の密閉部。
- 人工臓器の一部:人工心臓の弁、人工関節の一部など。
- 手術器具:グリップ部分、滅菌可能な部品。
食品産業での活用(パッキン、ホースなど)
無味無臭、無毒性、耐熱性、衛生性から、食品と接触する部品や調理器具に安心して使用できます。
- 食品機械用パッキン・ホース: 食品製造ラインの密閉部、搬送チューブ。
- 調理器具:シリコーン製ヘラ、鍋敷き、製菓型など。
- 乳児用品:哺乳瓶の乳首、おしゃぶりなど。
建築・住宅産業での活用(シーリング材など)
優れた耐候性と接着性から、建物の耐久性向上に貢献しています。
- シーリング材:窓枠、外壁の目地、水回りの防水シール。
- 接着剤:ガラス、金属、プラスチックなどの接着剤。
- 防水材:屋上、ベランダの防水コーティング。
その他の産業用途
- 航空宇宙産業:高温・低温環境に耐えるシール材、ガスケット。
- 日用品:スマートフォンの保護ケース、ベビー用品、スポーツ用品。
- 工業用部品:ポンプのダイヤフラム、バルブのシール、各種防振材。
まとめ
本記事では、シリコーンゴムの基本構造から、その種類、そして多岐にわたる産業での応用例について解説しました。
シリコーンゴムは、ケイ素と酸素を主鎖とする独自の化学構造により、優れた耐熱性、耐寒性、電気絶縁性、耐候性、生体適合性といった特性を発揮します。
ミラブル型、液状型、RTV型といった種類があり、それぞれが異なる成形方法や用途に適しています。自動車、電気・電子、医療、食品、建築など、現代社会のさまざまな分野で欠かせない素材として、その重要性は高まる一方です。
ご担当者様は、製品開発や部品選定において、シリコーンゴムの特性を深く理解し、最適な材料を選び抜くことが成功の鍵となります。
しかし、その種類や特性は多岐にわたり、選定には専門的な知識と経験が必要です。
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