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ゴム加工とは?ゴム種別の性質や種類について解説!

製造業において、ゴム部品は機械の性能や製品の品質を左右する重要な要素です。しかし、「自社製品に最適なゴム材料は何か」「どの加工方法を選ぶべきか」と悩まれる企画担当者の方も多いのではないでしょうか。
ゴム加工は、材料選定から成形方法まで、幅広い専門知識が求められる分野です。天然ゴムから各種合成ゴムまで、それぞれ異なる特性を持ち、用途に応じた最適な選択が必要となります。また、プレス成形、射出成形、切削加工など、加工方法によっても製品の品質やコストが大きく変わってきます。
本記事では、ゴム加工の基礎知識から、各種ゴム材料の特性、加工方法の違い、そして実際の製造における注意点まで、企画・設計段階で知っておくべき情報を網羅的に解説します。
ゴム加工とは
ゴム加工とは、天然ゴムや合成ゴムといった原料を、熱や圧力、化学反応などを利用して、特定の形状や機能を持つ製品へと成形する一連の工程を指します。
自動車部品、家電製品、医療機器、建築材料など、私たちの身の回りにある多くの製品にゴム部品が使用されており、その性能は最終製品の品質や安全性に直結します。
ゴム加工は、単に形を作るだけでなく、ゴム材料が持つ「弾性」「耐熱性」「耐油性」「耐薬品性」「電気絶縁性」といった多様な特性を最大限に引き出し、特定の用途に最適化することが求められます。
そのためには、適切なゴム材料の選定、最適な加工方法の選択、そして精密な品質管理が不可欠となります。
ゴム部品を検討する際には、製品の使用環境、求められる機能、コスト、生産数量などを総合的に考慮し、最適なゴム材料と加工方法を選定するための基礎知識が重要となります。
ゴムの基本性質と特徴
ゴムは、他の材料にはない独自の性質を持つ高分子材料です。
その特性を理解することは、適切な材料選定と加工方法の決定に不可欠です。
ゴム特有の変形する性質
ゴムの最も特徴的な性質は、大きな力を加えても容易に変形し、その力を取り除くと元の形状にほぼ完全に復元する「弾性」です。
この性質は、ゴムの高分子鎖が三次元網目構造を形成していることに由来します。
この網目構造が、外力によって分子鎖が伸びても、内部応力によって元の状態に戻ろうとする力を生み出します。
- 高い伸縮性:数倍から数百倍に伸び、元に戻る。
- 低硬度:比較的柔らかく、圧縮されやすい。
優れた衝撃吸収性
ゴムは、その弾性により外部からの衝撃エネルギーを効率よく吸収し、熱エネルギーとして分散させる能力に優れています。
このため、振動や衝撃を和らげる緩衝材や防振材として広く利用されています。
- 振動減衰:機械の振動を抑制し、騒音低減に貢献。
- 緩衝効果:落下物や衝突時の衝撃を吸収し、製品保護。
高いシール性能
ゴムは、その柔軟性と弾性によって、わずかな隙間にも密着し、液体や気体の漏れを防ぐ「シール性能」に優れています。
この特性は、パッキン、Oリング、ガスケットなどの密封部品に不可欠です。
- 気密性・液密性:流体やガスの漏れを確実に防止。
- 追従性:相手材のわずかな凹凸にも密着し、高いシール効果を発揮。
耐久性と経年変化
ゴムの耐久性は、使用環境やゴムの種類によって大きく異なります。
一般的に、ゴムは以下の要因によって経年変化(劣化)を起こします。
- 熱:高温環境下での硬化、軟化、亀裂。
- 光(紫外線):表面のひび割れ、色あせ。
- 酸素・オゾン:表面の粘着性、亀裂(オゾンクラック)。
- 薬品:膨潤、溶解、硬化。
- 機械的ストレス:繰り返し変形による疲労破壊。
これらの経年変化を考慮し、用途に応じた耐候性、耐熱性、耐油性、耐薬品性を持つゴム材料を選定することが重要です。
ゴム加工の主要な種類と特徴
ゴム製品の製造には、多種多様な加工方法が存在します。
ここでは、主要な加工方法とその特徴、適用例について解説します。
成形加工
成形加工は、ゴム材料を金型に入れ、熱と圧力を加えて所定の形状に作り変える最も一般的な方法です。
プレス成形の特徴と適用例
プレス成形(圧縮成形)は、加熱した金型に未加硫ゴム材料(コンパウンド)を充填し、プレス機で加圧・加熱することでゴムを硬化(加硫)させる方法です。
特徴:最も古くから行われている成形方法で、比較的シンプルな形状の製品に適しています。金型コストが比較的安価な場合が多く、中・小ロット生産に向いています。
適用例:Oリング、パッキン、ガスケット、防振ゴム、シート材など。
トランスファー成形のメリット
トランスファー成形は、プレス成形の一種ですが、金型とは別に設けられたポットにゴム材料を入れ、プランジャーで圧力をかけて金型キャビティにゴムを送り込む方法です。
メリット
- 複雑な形状や精密な部品の成形に適しています。
- 金型内の空気巻き込みが少なく、不良品発生を抑制できます。
- バリ(余分なゴム)の発生を抑えやすく、後処理の手間を削減できます。
適用例
医療用部品、精密Oリング、電気コネクタ用シールなど。
射出(インジェクション)成形の精度
射出成形は、ゴム材料を加熱・可塑化し、スクリューで溶融状態のゴムを金型内に高圧で射出・充填し、冷却・加硫して成形する方法です。特に熱可塑性エラストマー(TPE)で広く用いられますが、通常の加硫ゴムでも可能です。
特徴
- 短時間での成形が可能で、大量生産に適しています。
- 複雑な形状や高精度な製品を安定して製造できます。
- 自動化が容易で、人件費を抑えられます。
適用例
自動車部品(ブーツ、グロメット)、家電部品、精密工業部品など。
押出成形による連続生産
押出成形は、スクリューの回転によってゴム材料を加熱・混練しながら、ダイス(口金)を通して連続的に押し出し、特定の断面形状を持つ長尺製品を製造する方法です。
特徴
- 連続生産が可能で、非常に高い生産効率を誇ります。
- ホース、チューブ、異形断面のプロファイル材など、長尺製品の製造に最適です。
- 金型(ダイス)の変更で様々な断面形状に対応できます。
適用例
ゴムホース、チューブ、窓枠シール材、パッキング材、電線被覆など。
ゴム配合設計の重要性
ゴム製品の性能は、単にゴムの種類だけでなく、その「配合」によって大きく左右されます。
ゴム配合設計とは、ベースとなるゴムポリマーに、加硫剤、加硫促進剤、補強剤(カーボンブラック、シリカ)、軟化剤、老化防止剤、着色剤などを適切にブレンドし、目的の物性(硬度、強度、耐熱性、耐油性など)や加工性を実現する技術です。
必要な物性要件を明確に伝えることで、最適な配合設計が提案され、製品の性能向上やコスト削減につながることを理解しておくべきです。
切削加工
切削加工は、金型を使用せず、塊状のゴム材料を刃物で削り出して目的の形状に加工する方法です。
切削加工の特徴
- 金型不要:初期費用が抑えられ、試作や小ロット生産に有利です。
- 短納期:金型製作期間が不要なため、迅速な対応が可能です。
- 高精度:NC旋盤やマシニングセンタを用いることで、ミクロン単位の精度で加工が可能です。
- 複雑形状:金型では難しいアンダーカットのある形状や、非常に大きなサイズの製品にも対応できます。
金型成形との使い分け
切削加工と金型成形は、生産数量、納期、コスト、製品の複雑性によって使い分けられます。
- 切削加工:試作、開発品、少量多品種、短納期、高精度、金型費を抑えたい場合に適しています。
- 金型成形:量産品、コスト効率を重視する場合、一定以上の数量が見込まれる場合に適しています。
小ロット生産での優位性
特に試作品や限定生産品、または非常に特殊なサイズの部品を製造する際、金型を製作するコストや時間をかけられない場合に、切削加工は非常に有効な選択肢となります。
また、設計変更が頻繁に発生する開発段階においても、柔軟に対応できるメリットがあります。
接着加工
ゴム部品は単体で使用されるだけでなく、他の材料と組み合わせて使用されることが多く、その際に接着加工が重要な技術となります。
ゴム同士の接着技術
ゴム同士を接着する場合、同じ種類のゴムであれば加硫接着(未加硫ゴム同士を接着剤で貼り合わせ、熱を加えて加硫させる)が強力な接着力を生みます。
また、加硫済みのゴム同士を接着する際には、ゴムの種類に応じた専用の接着剤(シアノアクリレート系、エポキシ系、ウレタン系など)と適切な表面処理が不可欠です。
ゴムと金属の接着方法
ゴムと金属を接着する方法には、主に「加硫接着」と「後接着」があります。
- 加硫接着:金属部品の表面に接着剤を塗布し、未加硫ゴムと共に金型に入れ、加硫・接着する方法です。非常に強力な接着力を得られ、自動車部品の防振ゴムなどで広く用いられます。
- 後接着:加硫済みのゴムと金属を、専用の接着剤で貼り合わせる方法です。比較的簡便ですが、加硫接着ほどの強度が得られない場合があります。
ゴムとプラスチックの接着
ゴムとプラスチックの接着は、それぞれの材料の表面エネルギーや化学的性質が異なるため、比較的難しいとされています。
しかし、プライマー処理や表面改質(プラズマ処理など)を行うことで接着性を向上させ、専用の接着剤を使用することで接着が可能になります。
熱可塑性エラストマー(TPE)は、射出成形による二色成形(インサート成形)でプラスチックと一体成形できるため、接着工程を不要にするケースもあります。
接着強度を高める表面処理
接着強度を向上させるためには、接着前の表面処理が非常に重要です。
- 脱脂洗浄:油分や汚れを除去し、接着剤の密着性を高めます。
- 粗面化:サンドペーパーやブラスト処理で表面を粗くし、接着面積を増やします。
- プライマー処理:接着剤と被着体の密着性を高める下地処理剤を使用します。
- プラズマ処理:表面を活性化させ、接着剤との反応性を向上させます。
塗装加工とその他の二次加工
ゴム製品は、成形加工や接着加工の他にも、製品の機能性や意匠性を高めるためのさまざまな二次加工が施されます。
塗装加工
- 意匠性向上:カラフルな製品や、特定のデザインを表現するために塗装が行われます。
- 機能性付与:表面硬度の向上、摩擦係数の調整、耐候性・耐薬品性の強化、滑り性の付与などの目的で特殊な塗料が使用されます。
研磨加工
表面のバリ取り、寸法精度出し、光沢付与など。
穴あけ・切断加工
ドリルやレーザー、ウォータージェットなどを用いて、特定の形状に穴を開けたり、切断したりします。
印刷・マーキング
製品情報、ロゴ、識別コードなどを表面に印刷します。
表面改質
フッ素コーティングによる滑り性向上、プラズマ処理による表面活性化など。
これらの二次加工を適切に組み合わせることで、ゴム製品はより多様なニーズに対応できるようになります。
用途別ゴム材料の種類と選定基準
ゴム材料は、その化学構造によって多種多様な種類があり、それぞれ異なる特性を持っています。
製品の用途や使用環境に応じて、最適なゴム材料を選定することが極めて重要です。
NR(天然ゴム)の特性と用途
正式名称
Natural Rubber
特性
- 優れた弾性、引張強度、耐摩耗性、耐寒性。
- 耐老化性、耐油性、耐候性は劣る。
用途
タイヤ、防振ゴム、ゴムホース、医療用手袋、靴底など。
選定基準
高い弾性や強度が必要で、耐油性や耐候性がそれほど求められない場合に適しています。
BR(ブタジエンゴム)の特性と用途
正式名称
Butadiene Rubber
特性
- NRに次ぐ高い弾性と耐摩耗性、優れた耐寒性。
- NRと同様に、耐油性、耐候性は劣る。
用途
タイヤ(NRとのブレンドが多い)、ゴルフボールのコア、耐寒性が必要な工業部品。
選定基準
NRの特性を補完し、特に耐摩耗性や耐寒性を重視する場合にNRとブレンドして使用されることが多いです。
SBR(スチレンブタジエンゴム)の特性と用途
正式名称
Styrene Butadiene Rubber
特性
- NRに匹敵する機械的強度と耐摩耗性。
- NRより耐老化性、耐熱性が優れる。
- 耐油性、耐候性は劣る。
用途
タイヤ(特に乗用車用)、靴底、コンベヤベルト、ホース、工業用ゴム製品。
選定基準
NRの代替として広く用いられ、コストパフォーマンスと機械的強度を両立させたい場合に適しています。
NBR(アクリロニトリルゴム)の特性と用途
正式名称
Acrylonitrile Butadiene Rubber
特性
- 優れた耐油性(鉱物油、動植物油)。
- 耐摩耗性、耐熱性、耐老化性も良好。
- 耐オゾン性、耐寒性は劣る。
用途
Oリング、オイルシール、パッキン、燃料ホース、油圧・空圧機器用シール。
選定基準
油を使用する環境下でのシール材やパッキンとして最も一般的に選ばれます。アクリロニトリル含有量で耐油性と耐寒性が変化します。
CR(クロロプレンゴム)の特性と用途
正式名称
Chloroprene Rubber(ネオプレンゴムとも呼ばれる)
特性
- バランスの取れた物性:耐候性、耐オゾン性、耐熱性、耐油性、耐薬品性に優れる。
- 難燃性がある。
- 耐寒性はNBRより劣る。
用途
電線被覆、ウェーダー、ウェットスーツ、防振ゴム、接着剤、建築用シーリング材。
選定基準
幅広い環境での使用が可能で、特に耐候性や難燃性が求められる場合に適しています。
EPDM(エチレンプロピレンゴム)の特性と用途
正式名称
Ethylene Propylene Diene Monomer Rubber
特性
- 非常に優れた耐候性、耐オゾン性、耐熱性、耐水性、電気絶縁性。
- 耐油性は劣る。
- 耐薬品性(酸・アルカリ)も良好。
用途
自動車用ウェザーストリップ、窓枠シール、屋根防水シート、電線被覆、洗濯機部品。
選定基準
屋外での使用や高温・多湿環境、耐オゾン性が求められる場合に最適です。水回りや電気絶縁用途にも。
Si(シリコンゴム)の特性と用途
正式名称
Silicone Rubber
特性
- 非常に広い温度範囲(-60℃~200℃以上)での使用が可能。
- 優れた耐熱性、耐寒性、耐候性、耐オゾン性。
- 無味無臭で衛生的、生体適合性も高い。
- 機械的強度は比較的低い。
用途
食品機器部品、医療機器部品、家電部品、パッキン、Oリング、キーパッド。
選定基準
高温・低温環境下での使用、食品・医療分野での安全性、耐候性が最重要視される場合に選ばれます。
FKM(フッ素ゴム)の特性と用途
正式名称
Fluoro Rubber(バイトン®などが有名)
特性
- ゴムの中で最高の耐熱性(200℃~250℃)。
- 非常に優れた耐油性、耐薬品性(特に強酸・強アルカリ)。
- 耐候性、耐オゾン性も極めて良好。
- 耐寒性は劣る。高価。
用途
航空機部品、自動車エンジン周辺部品、半導体製造装置部品、化学プラント用シール材。
選定基準
極めて過酷な高温・薬品環境下で使用される場合に、他のゴムでは対応できない状況で選ばれる究極のゴム材料です。
IIR(ブチルゴム)の特性と用途
正式名称
Isobutylene Isoprene Rubber
特性
- 非常に優れた気体透過抵抗性(気体をほとんど通さない)。
- 耐熱性、耐候性、耐オゾン性も良好。
- 優れた電気絶縁性。
- 機械的強度は低い。
用途
タイヤのインナーライナー、チューブ、防湿シート、電気絶縁材、医療用栓。
選定基準
気密性や液密性が極めて重要で、気体の透過を避けたい場合に最適です。
ACM(アクリルゴム)の特性と用途
正式名称
Acrylic Rubber
特性
- 高温下での耐油性、耐熱性に優れる(NBRよりも高温に強い)。
- 耐オゾン性、耐候性も良好。
- 耐寒性、耐水性は劣る。
用途
自動車エンジン周辺部品(オイルシール、Oリング、ガスケット)、高温環境下の油圧・空圧機器用シール。
選定基準
高温下で油と接触する環境で、NBRでは耐えられないがFKMほどではない場合に検討されます。
まとめ
ゴム部品の選定や設計は、製品の性能、耐久性、コストに直結する重要なプロセスです。
企画担当者の皆様が、この記事を通じてゴム材料と加工方法に関する理解を深め、サプライヤーとのコミュニケーションを円滑に進め、最適なゴム部品の開発・調達に役立てていただければ幸いです。
最適なゴム材料の選定や複雑な加工方法でお困りの際は、ぜひ専門家にご相談ください。
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